日常生活で必須の「ワーキングメモリ」、学習能力の基礎としてもしっかり鍛えておきたい

「今何をしようとしたか忘れてしまうことがある」「ちょっとしたことが覚えられない」といった経験をしたことがありませんか。一時的な記憶情報を利用し処理する脳の力である、「ワーキングメモリ」が衰えているかもしれません。ワーキングメモリは鍛えたり、増やしたり、衰えを遅らせたりすることが可能です。

そこで今回はワーキングメモリの概要と具体的な鍛え方、鍛えることで得られるメリットを解説します。

ワーキングメモリとは?

ワーキングメモリとは、得た情報を一時的に保ちながら処理する脳の働きのことです。たとえば「料理するときにレシピの材料や分量を覚える」「計算をするときに数字を覚える」「読んだ本の内容を理解する」といったように、一時的な情報を記憶し、活用するようなシーンでワーキングメモリが働きます。

ワーキングメモリは音声情報や視覚情報など情報の種類によって、記憶や処理をする手段や場所が異なると言われています。また、容量に限界があるとも考えられており、ワーキングメモリで同時に保持できる情報は3つ程度とも言われています。

ワーキングメモリといろいろな「脳力」との違い

ワーキングメモリと同じように、記憶を司る脳の働きにはたくさんのものがあります。ワーキングメモリとその他の脳の能力の違いについて解説します。

ワーキングメモリと短期記憶

ワーキングメモリと短期記憶の違いは、情報の活用方法が積極的であるか、受け身であるかです。

ワーキングメモリは読書、計算、推理、料理など記憶した情報を保持しつつ、同時に脳が何かしらの情報処理をする際に働きます。ワーキングメモリはパソコンのCPUのような役割を持ち、情報の操作と管理を同時に行っています。ワーキングメモリは情報の記憶よりも処理を重視しており、長期記憶などとも関連していると言われています。

短期記憶は、電話番号や住所、目印などの情報を一時的に頭にメモして覚えることを指します。ワーキングメモリのように覚えた情報を保持しながら何かの処理をすることはありません。ワーキングメモリがCPUであれば、短期記憶はUSBメモリなどの記憶媒体にあたり、覚えられる情報の容量にも限界があります。情報の処理ではなく記憶を重視しており、記憶の保持力も音声や視覚など情報の種類に依存するのが特徴です。

ワーキングメモリと長期記憶

ワーキングメモリと長期記憶の違いは、情報の保持期間や種類です。

ワーキングメモリは一時的に情報を保持しながら操作する機能であり、容量に限界があります。取り扱うのは、視覚、空間などの短時間で処理される情報です。

長期記憶とは、長期にわたって情報を保存する貯蔵庫のような役割を持つ機能です。容量に限界がないと言われています。言葉の意味、音楽、エピソードなど長時間保存される情報を取り扱います。たとえば自分や家族の名前、住所、誕生日などの情報は長期記憶によって保存され、基本的に忘れることはありません。

なお、長期記憶から情報を取り出したり、情報同士を統合したりするときにはワーキングメモリが働きます。

ワーキングメモリとIQ

ワーキングメモリが脳の機能であるのに対して、IQは言語理解、知覚推理、処理速度などの複数の認知能力に対する総合的な指標のため、概念が異なります。そのため比較することはできませんが、ワーキングメモリはIQに影響を与える要因の一つであると考えられています。ワーキングメモリが高いほど読解や計算や推論などの認知タスクにおいて、有利になる可能性があります。

IQを測定する検査には多くの種類がありますが、その中でも測定する要素の一部にワーキングメモリが入っている「WISC」という知能検査があります。WISCでは「全検査IQ」という数値のほか、言語理解・知覚推理・ワーキングメモリ・処理速度の「4つの指標ごとのIQ」という数値が結果として出ます。ワーキングメモリはIQの一部分を測るものであり、IQはワーキングメモリ以外の要素も含んでいると言えるでしょう。

ワーキングメモリを鍛える方法

ワーキングメモリを鍛えることで、認知タスクの処理能力が上がるなどのメリットが得られます。ワーキングメモリを鍛える方法には、大きく分けて以下3つのものがあります。

  • 楽しいことを考える

ポジティブな出来事を思い出す、想像することでワーキングメモリに関係する脳の領域が活性化される可能性が高いです

  • イメージングをする

イメージングとは頭の中にイメージを思い浮かべる訓練です。視空間的短期記憶や中央実行系を刺激できます

  • デュアルタスクを行う

運動と知的作業の2つを同時に行う(デュアルタスク)ことで、ワーキングメモリに負荷をかけて鍛えられます

次に、具体的なワーキングメモリを鍛える方法を順に解説します。日常生活に取り入れやすいものも多いので、ぜひ試してみましょう。

遊び

以下のような遊びは脳の前頭葉に刺激を与えて思考や判断の能力を向上させる効果があると言われ、ワーキングメモリを鍛えるのにも有効です。

  • 昔からある遊び:折り紙、あやとり、縄跳び、手遊び など
  • カードゲーム:トランプ、めんこ、花札 など

ワーキングメモリを鍛える遊びは、認知症の予防にも役立つと言われています。ワーキングメモリを鍛える遊びを毎日少しずつ取り入れることで、脳の健康を保つのにも役立つでしょう。

ゲーム・アプリ

以下のようなゲームやアプリで遊ぶのも、ワーキングメモリを鍛えるのに有効です。

  • 脳トレや数独などの計算ゲーム
  • ナンプレなどの記憶と記載の整理 など

習い事

以下のような習い事は頭と体を同時に使うデュアルタスクのためワーキングメモリを鍛えるのにも有効です。

  • サッカーやバスケなどのスポーツ
  • リトミックやピアノなどの楽器演奏
  • そろばんのような道具を扱う学習

ワーキングメモリって検査できるの?

ワーキングメモリの測定や検査は可能です。以下2つの検査方法があります。

  1. ワーキングメモリ測定のためのテストを用いる方法

音声や視覚や空間などの情報を一時的に保持しながら操作する課題を行い、ワーキングメモリの容量や機能を測定するテストを使った方法です。代表的なテストには以下のものがあります。

  • AWMA:ピアソン社公式サイト
  • HUCRoW:広島大学HUCRoW公式サイト
  1. ワーキングメモリが検査項目に含まれる知能検査による方法

WISCのようなワーキングメモリを測る項目のある知能検査を受け、得点からワーキングメモリのレベルを推定する方法です。

  • ウェクスラー式知能検査(WAIS・WISC):WAIS-IV・WISC-Ⅳ知能検査について

ワーキングメモリを鍛えるメリット・デメリット

ワーキングメモリを鍛えることで得られるメリットと、気を付けるべきデメリットを解説します。

「高い」とメリットは多い?

ワーキングメモリが「高い」場合のメリットとデメリットをまとめました。

<メリット>

  • 読解や計算や推論などがスムーズになる
  • 集中力や自己コントロール能力が高くなる
  • 記憶力も高い傾向にある

ワーキングメモリが高いことで、認知タスクの処理能力が上がる、仕事や勉強にもコツコツ取り組める、さまざまなことを記憶できる、といったメリットが得られます。

<デメリット>

  • 情報処理に多くの労力を必要とし、脳が疲弊しやすくなる
  • こだわりが強くなる傾向がある
  • 細かい情報にこだわりすぎたり、自分の考えに固執したりする傾向がある
  • 社会的なコミュニケーションが難しくなったりする可能性がある

ワーキングメモリは学習や仕事や日常生活を支える重要な能力です。高すぎると多くの情報処理を行うことで疲れてしまうこともあります。また、細かい情報や自分の考えに固執したり、他人の考えや感情に寄り添うことが苦手になったりするといったこともあるでしょう。より快適に生活できるように、適切なトレーニングや工夫を取り入れるのもおすすめです。

「低い」場合もデメリットばかりじゃない?

ワーキングメモリが「低い」場合のメリットとデメリットをまとめました。

<メリット>

  • 長期記憶には優れた人が多い
  • 独自性や柔軟性があまり必要としないことが得意な場合が多い

ワーキングメモリが低い場合でも、長期記憶を活かし、自分の興味や知識のある分野では才能を発揮できる可能性があります。また、マニュアル化された工程を遵守する作業など、コツコツ決められたことを行うのは得意という人も多いでしょう。

<デメリット>

  • 複数の情報を同時に記憶したり処理したりすることが苦手
  • モノをなくしたり、忘れたり、日常生活におけるミスがある

複数人で会話をしたり、複雑な内容の話を理解したりといったことに苦手を感じる場合があります。ワーキングメモリが低いから悪い、というわけではなく、記憶する領域によって得意とする分野は人それぞれ異なります。ただし、ワーキングメモリが低いとうっかりミスをする可能性も高くなるため、日常生活に必要最低限のワーキングメモリは鍛えて身に付けておくのをおすすめします。

ワーキングメモリと発達障害の関係

ワーキングメモリと発達障害は、同じ脳機能の一部の差異として比較されることが多いです。ワーキングメモリには個人差があり、低い人は複数の情報を同時に記憶したり処理したりすることが苦手です。そのためワーキングメモリの低さと発達障害の特性による困りごとは似ている場合が多く、関連性について言及されることもあります。

ワーキングメモリと発達障害の関連性については証明されていませんが、発達障害の中でもADHD(注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害)やLD(学習障害)では、ワーキングメモリが低い傾向があると言われています。

毎日の「考える」を今よりもっと快適に!そろばんで頭の体操をしませんか

ワーキングメモリの概要や鍛える方法、メリット、デメリットについて解説しました。私たちは日常生活でワーキングメモリをたくさん活用しています。動かせる容量が大きくなれば、認知タスクの処理能力が早くなるなど、さまざまなメリットが得られます。また、ワーキングメモリを鍛えることで、脳の老化対策にもなると注目されています。

ワーキングメモリを鍛える方法をお探しなら、そろばんがおすすめです。そろばんによってワーキングメモリを鍛えるだけでなく、日常生活に役立つ計算力や暗算力が身に付きます。また、大人になってから仕事などでも活用する集中力、情報処理能力、忍耐力などの脳の基礎力も鍛えられます。ぜひご検討ください。

いしど式オンラインをもっと詳しく:いしど式オンライン

オンライン教室の体験入学をしてみよう!:いしど式オンライン本部教室(完全オンライン教室)